カイロプラクティックは、1895年にアメリカのD.D.パーマーによって始められた手技療法です。カイロプラクティックという言葉は、ギリシャ語で「手」を意味する「カイロ」と、「技」を意味する「プラクティコス」から作られています。
カイロプラクティックの本質は、背骨の矯正を通じて神経の働きを最大限に発揮させることにあります。D.D.パーマーは、自然治癒力が「何か」によって邪魔されることで病気が発生すると考え、その「何か」は背骨の異常として現れると結論付けました。カイロプラクティックでは、この背骨の異常を矯正することで、神経系の働きを改善し、体が本来持っている治癒力を引き出すことを目指します。
重要なのは、カイロプラクティックが行うのは骨格の構造を矯正することではないという点です。背骨を正しい機能に調整することで、神経が本来の機能を発揮できるようにサポートするのが目的です。神経系は全身の健康に深く関わっており、これを正常に保つことが、カイロプラクティックの核心的な考え方です。
このように、カイロプラクティックは、骨格の形を整えるのではなく、神経の働きを最適化することで、体の健康を支える療法です。
WHO基準のカイロプラクターは、世界保健機関(WHO)が定める教育と安全に関する指針に基づいて養成された専門家です。
WHO基準に準拠したカイロプラクターになるためには、まず、世界カイロプラクティック教育審議会(CCE)などの国際的なアクレディテーション機関から認可を受けた大学で、カイロプラクティックの教育プログラムを修了することが必要です。
これらのプログラムでは、解剖学、生理学などの基礎医学に加え、カイロプラクティックの専門科目や臨床実習を含む、4~5年(4200時間以上)の全日制教育が行われます。この厳しい教育課程を経て、国際基準に基づいた高度な知識と技術を身に付けることが求められています。
さらに、アメリカやその他の法制化された国々では、カイロプラクターは「ドクターオブカイロプラクティック(Doctor of Chiropractic, D.C.)」という資格を持ち、医師と同等の資格として認められています。これにより、カイロプラクターは健康管理や治療において高い専門性を持つプロフェッショナルとして活動しており、患者の健康維持や症状の改善に対する責任を担っています。
このように、WHO基準のカイロプラクターは、国際的に認められたプログラムを修了した、質の高いケアを提供できる専門家です。施術を受ける際には、この資格を持つカイロプラクターを選ぶことが、安全で効果的な治療を受けるための重要なポイントです。
カイロプラクティックと整体は、日本ではしばしば混同されがちですが、それぞれの目的や方法、そしてバックグラウンドには大きな違いがあります。
整体とは?
整体は日本に古くから存在する民間療法の一つで、体のバランスを整えることを目的としています。整体は、昭和初期に日本国内のさまざまな民間療法を統合しようとした動きの中で生まれました。整体は、主に骨格や筋肉の調整を行い、体の構造的なバランスを整えることを重視します。しかし、整体には統一された教育や国際的な基準は存在せず、施術者によって技術や考え方が大きく異なることがあります。
主な違い
目的: カイロプラクティックは神経の機能を最適化することを目的とし、整体は体のバランスを整えることを目的とします。
手法: カイロプラクティックは背骨を矯正して神経系の働きを改善することに焦点を当てますが、整体は骨格や筋肉の調整によって体のバランスを整えることに焦点を当てます。
教育と資格: カイロプラクティックはWHO基準の教育を受けた専門家によって行われるプロフェッショナルな療法です。一方、整体には統一された教育基準や国際的な認定機関が存在しないため、施術者によって技術や考え方が異なることがあります。
このように、カイロプラクティックと整体はその根本的な考え方と目的において大きな違いがあります。残念ながらこのような歴史から日本にはカイロプラクティックを規制する法整備が整っておらず、誰でもカイロプラクターとして開業することができます。人を触る資質や評価、施術には格差があり、中には危険と思われる施術をするセラピストがいるのが現状です。そのため施術を受ける際には、それぞれの特性を理解した上で、自分に合った方法を選ぶことが重要です。